世田谷パブリックシアター『森 フォレ』+ポストトーク

ミステリやバディもの冒険譚のようでもある、8代にわたる年代記。上演時間約3時間40分(休憩2回を含む)。
WWIやダッハウ、ベルリンの壁崩壊等々時代を行き来して複雑だけど、見応えがあった。
最後の種明かしで、血の呪いが断ち切られたことへの安堵と、ミッシングリンクが発見されて、物語が新しい関係性で繋ぎ直されたことへの希望があった。
あのリュディヴィーヌの選択(子を産めない自分よりも、身籠っているサラのほうが生きるべき)を現代人としては良しとしない、とポストトークで上村さんが言ってたのまで含めて良かったと思う。

観てから1か月近く経って、色々忘れてしまった。
とにかく言葉が強いのと、見えざるリュデヴィーヌの姿が舞台に立ち上がってくる1幕ラストに高揚した。
あの頭蓋骨の話で、私の中では「謎解きミステリー」の比重が上がって楽しめた気がする。

一方で、家系図を辿る(ただし時系列ではない)中で出てくる女性には自由がなく、弟あるいは兄(エレーヌにとってアルベールは父だけど実際は異母兄よね?)との間に子が生まれたり、呪われた血が連鎖していく。
なので、そこに嫌悪感を抱く人がいるのもわかる。
リュディヴィーヌがサラに言う「新しい命を与えることができる人間(=サラ)が、それをできない人間(=リュ)のために自分の命を犠牲にするの?」は、命の選別だから。

ただ、結局のところ、リュディヴィーヌがサラを助けたのはなんだか友情によるところが大きいようだし(もう少し描写が欲しかった気がする)、
呪われた「血」はリュディヴィーヌで断ち切られつつも、リュディヴィーヌが助けたいと思った子供は「天使の静かな足あと」つまり人の善意によって助けられ、ルーに繋がっていく。
そしてルーはダグラスとは恋仲になりそうで結局ならず(超重要ポイント)、「決して見捨てない」で幕が下りるのは、希望で閉じられた物語だったのだと思う。

■その他雑感
・「子どもキリン」を「子供斬り?物騒な話だな!」と思ってたのは秘密。きりん…ジラフ…ぅぅ、頭が…(『永遠の仔』ののろい)
・リュスみたいな、過去に囚われたままのお年寄りって、過去100年以前にはいたんだろうな〜と想像するんだけど、これからの100年では存在が減るんだろうか?良しとされる価値観の変化が早くて、セルフケアやメタ認知能力も上がってるから、傷を抱えたまま老人になる人は減りそう…減るといいな。自分の身に置き換えると、ここからの30-40年は変わらない(変われない)って予言なんだろうか(ブルブル

■7/16マチネ観劇後のポストトーク。
演出家の上村さん、岡本健一さん、成河さん、芸術監督・野村萬斎さん、という強そうな並び(笑)。
その最初のほうで「あのリュディヴィーヌの選択を現代人としては良しとしない」と言いつつ、だからといって安易に「女性はすごい」系に話が広がらなかったのが良かった。男性だけ4人並べてそんなこと言ってもね。

■その他トークショーの話題
・ワークショップを経て書かれた台本だから役者の都合(成河さん談「この日はいなかったんだな~」)や癖が出てる。
・4部作の最後になったが、最初は1作目にフォレをやるつもりだった。やらなくてよかった(上村さん談)
・過去3作はシアター・トラムだったが、フォレは世田谷パブリックシアターで、劇場の広さが良い効果になった。勧めたのは萬斎さん。
・いわゆる「お友達にも勧めてください」的な言葉を、「吹聴してください」と表現する萬斎さんが(好き)

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