去年まつもと市民芸術館で観たときは「あ、結構好きかも。でもちょっと取っ散らかってるかな」くらいの印象で、ライビュも序盤はいまひとつ乗り切れずに見てたんだけど、最終的に東京公演を後半1枚しか取ってなかったのをむちゃくちゃ後悔した。
物語はもちろん、それ以上に演出や役者さんたちがものすごく新感線してて、カッコよかった。
『朧の森に棲む鬼』が市川染五郎のために、『薔薇とサムライ』が天海祐希のためにある作品だとするなら、偽義経は生田斗真のためにある作品(敬称略)。
すべてが生田斗真のためにある(ように結果的に見える、かもしれない)し、そのお膳立てに主演がきっちり応えてる。
雑誌のインタビューの「今回は、いのうえさんから”本当の意味で、新感線の真ん中を任せられる役者になってくれた”ということを言っていただいて。すごく嬉しかったですね」(STAGEnavi 2019 vol.39)というの、本当にそうなんだろうなと。
ごごナマ(2020年1月放送)で古田新太さんが「斗真はチームに属してないからコンサートもない。ライブ(舞台)の斗真を見てほしい」と言ってたの、わかるわ、かるよ…。
とりたてて生田斗真さんのファンというわけではないのだけど(好感ベースではある)、観終わったら「おれたちの斗真ーーー!!!!!!」ってなるやつだった。
もちろん他の俳優陣も皆さん素晴らしく(新感線における橋本さとしさんの新感線感とカッコよさは何なんだ…)、個人的には新感線のなかで相当好きな部類かも。
ワカドクロ以降(とメタマク2006)しか生で観てないから、生で見た中では花髑髏か偽義経かって感じ(阿弖流為は歌舞伎NEXTなので別枠)。
人に勧めるなら偽義経かも(髑髏なら先にワカを勧めたいし、ぐるぐるしすぎてもう判断が迷子)。
朧の森でも使ってた透ける黒幕効果もあって場面転換はそれと感じさせないし、照明もカッコいいし、衣装・ヘアメイクはもちろん、今回特筆すべき歌舞伎なメイク(後述)と、とにかくてんこ盛りで気持ち良かった。
あの後ろ手に剣を引き抜くところのマンガ感、風まで吹かせて、最高じゃん…。
なので、これが東京全40公演のうち、新型コロナ感染症(COVID-19)流行に伴う自粛(自粛!!)で20公演に減ってしまって、さらに博多座での公演も危ぶまれる状況(3/27にやります、との宣言あり)にあるのが本当にもったいなくてならない。
あの生田斗真のパフォーマンスは、いのうえさんの演出と新感線のスタッフワークは最高だから。
あれだけ準備されたものが、燃焼することなく消えてしまうのはあまりにも切ない。
しかも3/28の首相談話によれば、税金での補償は難しいとのこと(で、終息後にイベント代金を割引とは…?)。
かりに補償があったとしても、失われるものはたくさんある。
三月大歌舞伎やオグリやNARUTOのように、準備されたのに1度も観客に披露されることなく幕を閉じた作品もたくさんある。
宝塚も辛うじて数公演は開けたけど、退団公演をやれない側と観られない側の失望は想像するに余りある。
でも、せめてお金の心配だけでもなくなれば、20公演分の払い戻しっていくらだー!!?なんて心配はせずに嵐が過ぎ去るのを待てるのに。